第1話:気づいたら捨て好きでした
捨てるブーム、ですね。実はわたしも小さいころから捨てることが大好きでした。クラスの忘れ物ボックスが日に日に溢れていくのに堪えられず、すっきり整理し先生に褒められたりしていました。美容に目覚めたきっかけも、小学3〜4年のころ、頂き物の石鹸が段ボール何個分もたまっているのをどうにかしたい気持ちから。一回の入浴でなんと一個の石鹸を使い切る(!)という暴挙に出たのです。最初のうちこそどうすれば石鹸を素早く消去できるか研究していたのですが、ふと石鹸によって泡立ちや感触、香りや洗い上がりに大きな違いがあることを発見。確か当時は生クリームのような泡立ちのラックスが最高でした。それからは毎朝チラシをチェックし、セール価格になったラックスを母にせがんだものです。
捨て好きが高じて抱いた石鹸への関心は、成長とともに美容全般へとシフトしていきました。高校生のときには用務員さんと仲良くなって、時効になった落とし物の化粧品を分けてもらうという必殺技も身に着けました。美術系のそこそこお嬢様学校だったので、マリークヮントの14色入りメイククレヨンなど、お宝ザクザクでございましたよ。
その後、美容の道に入ったわけですが。時はバブル。〝捨てる〟と〝美容〟は全くもって相いれない状況でした。その頃の美容は「うんといいものをなるべくたくさん」という風潮。海外ブランドの新製品に次々飛びつき、メイクを仕上げるためにいくつものアイテムを駆使するのです。だからどんなに急いでも、メイクに40分くらいは平気でかかってしまう。おまけに容器もデコラティブで場所取りなものがこれまた素敵で。捨てるどころか増える一方、むしろ増やせ!というイケイケな美容界でした。
もちろんわたしも熱に浮かされ、美容アイテムを増殖させていきました。洗顔だけで10アイテム以上(ポイントメイクアップリムーバー、クレンジングクリーム、クレンジングオイル、クレンジングミルク、洗顔料3〜4種類、泡立てネット、部分用スクラブ剤、ピーリングパック、拭き取り化粧水など)を取り揃え。電子レンジぐらいの大きさの美顔器なんかも持っていましたよ。そんな状況をおかしいと思わず、むしろ「これだけのことをしなければキレイになれないんだ」と思い込んでおりました。
そんなことをしていれば当然、部屋は美容アイテムで溢れかえります。しかも、部屋の一角が雑然としてくると、つられて部屋全体が雑然とするのです。脱いだ服を元に戻さなくなったり、使わない書類をそのままにしたり。そんな状態がしばらく続いたある日、「あれ?これいやかも」と。生来の捨て好き=スッキリ好きが、遂に頭をもたげる日がやって来たのです。 ・・・